「超加工食品」の多い食事、うつや認知症の割合が高かった、研究

ソース: National Geographic / 画像: GETTY IMAGES /著者: JANIS JIBRIN/訳=三枝小夜子

超加工食品の多い食生活は、メタボリックシンドローム、肥満、うつ病のリスクの上昇など、病気の罹患率や死亡率の上昇と関連していることが明らかになっている。(PHOTOGRAPH BY WILDPIXEL, GETTY IMAGES)

 ソーダ、キャンディー、エナジーバー、フルーツヨーグルト、冷凍ピザ、冷凍食品などの超加工食品の多くは、甘いもの、脂肪分の多いもの、しょっぱいものへの欲求を満たしてくれる。けれども最近の研究により、超加工食品は脳にまで悪影響を及ぼし、うつをはじめとする気分障害や認知機能の低下を招くおそれが示されている。

 医学誌「Nutrients」に2022年6月に掲載されたレビュー論文によると、超加工食品を多く含む食事では、うつ病のリスクが44%、不安障害のリスクが48%高かった(編注:調査対象に日本は含まれていない)。2022年12月に医学誌「JAMA Neurology」に発表された別の研究では、1万775人のブラジルでの追跡調査により、総カロリーの20%超を超加工食品から摂取する人は、それ以下の人に比べて全般的な認知機能が28%速く低下したことが明らかになった。

 なかでも心配なのは、英国に住む7万2083人の追跡調査から、超加工食品の摂取量が10%増えるごとに認知症のリスクが25%上昇していたという、医学誌「Neurology」に2022年9月に発表された報告だ。

「厳密な因果関係はまだ不明ですが、追跡研究で得られた証拠からは、超加工食品をたくさん食べる人は、将来、うつ病を発症するリスクが高まると言えそうです」と、オーストラリア、ディーキン大学医学大学院の博士研究員で、「Nutrients」の論文の筆頭著者であるメリッサ・M・レーン氏は電子メールで説明する。

 塩分、糖分、飽和脂肪酸のとりすぎが、慢性の炎症、高血圧、高血糖、心臓病、2型糖尿病などにつながることは、一般の人々にも広く知られている。しかし、これらの疾患が脳への血流を低下させ、血管性認知症のリスクを高めることはあまり知られていない。

 また、ある種の人工甘味料やグルタミン酸ナトリウムなどの添加物も、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの脳内物質の邪魔をして、精神的・感情的な満足度を低下させるおそれがある。(参考記事:「人工甘味料が腸内細菌を乱すと判明、健康に悪影響の恐れも、研究」

中毒性への懸念も

 超加工食品のもう1つの問題は、中毒性への懸念だ。「超加工食品は、母なる自然の恵みである食品との共通点よりも、タバコとの共通点の方が多いのです」と、米ミシガン大学アナーバー校の心理学教授であるアシュリー・ギアハート氏は言う。

 それは意図的なものだ。「巨大企業が私たちを夢中にさせるためにこれらの食品を作り出し、適切な食事をできないようにしているのです。食料の主権にかかわる問題だと思います」と、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院の公衆衛生栄養学の助教であるシンディー・リアン氏は批判する。

 人間は、甘く、脂肪分が多く、カロリーの高い食べ物に反応するように進化してきた。人類の誕生から現代までのほとんどの時代、私たちのこの特性は生き残る上で有利にはたらいてきた。しかし自然界の食べ物は、ベリー類のように糖分が多いか、ナッツ類のように脂肪分が多いか、どちらかだ。(参考記事:「「人々の命を奪う」食物依存症とは、糖と脂肪の甘くなめらかな罠」

「糖分と脂肪分の両方が多い食べ物は自然界にはありません」とギアハート氏は言う。「糖分と脂肪分の多さが超加工食品の特徴です。これに塩分と人工調味料と鮮やかな色が加わると、脳は食べたいという衝動を抑えられなくなります」

「超加工食品」とは

そもそも、こうした超加工食品とは何だろうか。家庭の台所にない素材が使われているというのがごく大雑把な目安だが、厳密には2016年にブラジルの研究者らが提唱した「NOVA分類」にしたがっている。

 これは加工度により食品をグループ分けしており、第1グループは、新鮮な、あるいは冷凍の果物や野菜や魚介類や肉類、小麦粉、乾燥パスタや生パスタなど、未加工または最小限の加工しかされていない食品で、通常、1つの原材料のみからできている。

 第2グループは、植物油、砂糖、コーンスターチなどの「加工食品の原料」で、未加工食品から直接抽出されるもの。

 第3グループは、防腐剤の入っていないベーカリーパン、ほとんどのチーズ、塩と水だけを加えて缶詰にしたツナ缶や豆や野菜の缶詰などの「加工食品」だ。原材料リストが短く、用語もわかりやすく、主に塩が防腐剤の役目を果たしている。

 第4グループが「超加工食品」で、ソーダ、キャンディー、クッキー、ケーキ、エナジーバー、フルーツヨーグルト、食品代替バー、シェイク、ホットドッグ、大量生産された各種包装パン、シリアル、冷凍食品などだ。これらの食品はしばしば脂肪分、糖分、ナトリウムが多く、たいてい調味料、色素、人工甘味料などの添加物が含まれている。原材料リストは長くなりがちで、例えば「ニュートリグレイン・ソフトベイクドブレックファストバー・ストロベリー」には48もの成分が表示されている。

悪しき食習慣から脱却するには

 こうした超加工食品の摂取量を減らしたいという方のために、専門家おすすめのアプローチをいくつか紹介しよう。

 ギアハート氏によれば、最初の一歩は「自分を責めないこと」だという。「これまでの食生活につき、あなたに落ち度はありません。超加工食品の中毒になるような環境に置かれているのですから」

 毎日3回の食事と1、2回の間食をとるようにしよう。空腹になりすぎると脳の報酬中枢を刺激する手軽で安価な超加工食品を衝動買いしやすくするが、規則正しい食事はこれを防ぐことができる。

 加工度の低い食品にも、ナッツ類や旬の熟した果物など、手軽でおいしいものがある。ギアハート氏は、「私のお決まりランチの1つは、卵と、おいしいドレッシングであえたグリーンサラダにパルメザンチーズをトッピングしたものと、ひとつかみのベリーです」と言う。

 食品の成分表示ラベルを見比べて、ナトリウムや砂糖の量が少ない食品や、原材料リストが短い食品を選ぶのも良い。

 超加工食品の中にも、ほかに比べて健康的なものがある。スーパーでも、食物繊維やその他の栄養素が含まれている全粒粉パンを購入できる。「ベーカリーに行って保存料や添加物の入っていないパンを買うのは、ほとんどの人にとって現実的ではありません」とリアン氏。

 リアン氏はまた、親が子どもに、食品会社のマーケティング部門があの手この手で超加工食品を消費させようとしていることや、超加工商品を食べ続けるとどのようなことになるのかを教えるよう提案している。そうした行動が、食品のマーケティングから子どもたちを守る効果は、2019年に学術誌「nature human behaviour」に発表された論文ですでに示されている。

文字= JANIS JIBRIN / 翻譯= Saegusa Sayoko