チーズの食べすぎは体に悪いと言われる理由
ソース: Women’s Health / 画像:GETTY IMAGES /著者: DR HAZEL WALLACE、伊賀本 藍
ここ最近は乳製品が議論の的になっている。特にチーズが地球環境や人体に与える影響についての意見はまちまちで、骨や歯に良いと言う人もいれば、その脂質含有量の多さから心臓発作の原因になると言う人もいる。
でも、チーズは非常に魅力的な食材なので、この状態を放っておけない。チーズが体に悪いというのは本当なのか、ここでハッキリさせておこう。今回はこの内容をイギリス版ウィメンズヘルスからご紹介!
チーズが体に“よい”と言われる理由
1.カルシウム
他の乳製品と同様、チーズはカルシウムの優秀な供給源で、1食分(30g)のチーズには低脂肪牛乳コップ1杯分のカルシウムが含まれている。私たちの骨量は20代後半から30歳にかけてピークに達するけれど、カルシウムにはそのプロセスを後押しするという重要な役割がある。
閉経後の女性もカルシウムを十分に摂取するべき。というのも、閉経に伴ってエストロゲンが少なくなると、骨量が減り、骨粗しょう症のリスクが高くなるから。
ちなみに、カルシウムの吸収はビタミンDに依存するので、カルシウムが豊富な食品はビタミンDが豊富な食品と一緒に摂取しよう。
2.タンパク質
タンパク質は体のすべての細胞に不可欠な栄養素で、筋肉、軟骨、靭帯、皮膚、髪を含む多くの組織の構築と修復だけでなく、重要な酵素、ホルモン、抗体、防御細胞の生成や免疫システムの強化にも使われる。1食分(30g)のチェダーチーズには、卵1個分に相当する7~8gのタンパク質が含まれている。肉や魚を食べないベジタリアンにとっては特に貴重なタンパク源。
3.ビタミンB12
チーズは、動物性食品(肉、魚、卵、乳製品)からしか摂取できないビタミン12の素晴らしい供給源。面白いことに、肉と卵には乳製品より多くのビタミンB12が含まれているけれど、ビタミンB12は牛乳をはじめとする乳製品から摂取したほうが体に吸収されやすい。スイスチーズは特に優秀とされており、1食分(28g)で1日に必要なビタミン12の半分が摂取できる。
ビタミンB12は赤血球の生成に必要で、脳と神経細胞の正常な機能と発達にも不可欠な栄養素。鉄と同様、ビタミンB12不足も貧血を引き起こすことがある。その症状は鉄不足と同じで、疲労感、息切れ、虚弱、めまい、顔色が青白いなど。ビタミンB12不足は、手足のしびれや感覚低下を伴う神経損傷に加え、うつや認知症などのメンタルヘルス疾患を引き起こすこともある。
4.腸内細菌
ワインとチーズの摂取量が多いにも関わらず、フランス人には心疾患と肥満が比較的少ない。これは科学者たちが“フレンチ・パラドックス”と呼ぶ現象で、フランス人の健康の秘訣は赤ワインの抗酸化物質にあるという説もあれば、フランス人の腸内細菌の構成にあるという説もある。また、乳製品(特にチーズ)は、腸内細菌によって作られる有益な物質(酪酸とプロピオン酸)の量を増やすことが証明されている。
とはいえ、チーズにもいろいろあって、全てのチーズに生きた細菌(プロバイオティクス)が含まれているわけではない。生の(低温殺菌されていない)ミルクチーズの場合は、チーズが発酵する間、ミルク内の自然な細菌が生き続ける。
ソフトチーズには、リステリア症という感染症を引き起こすリステリア菌が含まれていることがある。リステリア症は非常に稀で、自然に治癒するけれど、免疫力が低下している人や妊娠中の女性では問題となる可能性があるため、いずれかのカテゴリーに属する人は、白カビや青カビで熟成させた生のソフトチーズの摂取を避けるべき。このようなチーズはリステリア菌の含有量が高い可能性がある。
チーズが体に“悪い”と言われる理由
1.飽和脂肪
飽和脂肪の摂取量が多いと、LDL(悪玉)コレステロール値と心疾患のリスクが高くなる。でも、乳製品は、飽和脂肪の含有量が多いにも関わらず、心血管系の健康リスクを上げないどころか逆に下げる可能性もあることが研究によって分かっている。
チーズはこの作用が特に強い。オーストラリアの研究チームが1つ目のグループに脂肪分40gのバター、2つ目のグループに同じく脂肪分40gの熟成チーズを4週間食べさせてからグループを入れ替えたところ、バターを食べているときにだけ総コレステロール値とLDL(悪玉)コレステロール値の上昇が見られた。より最近の研究でも同様の結果が出ている。研究チームがa)全脂肪のチェダーチーズ、b)低脂肪のチーズとバター、c)カルシウムで補強されたバターを摂取した人々のコレステロール値を比較したところ、全脂肪のチェダーチーズを食べていた人たちは他のグループの人たちよりもコレステロール値が低かった。その理由はチーズが代謝される仕組みにあるのかもしれないけれど、チーズおよびカロリーの過剰摂取はコレステロール値の上昇につながる可能性が高い。やはり何事も控えめにすることが大切。
2.塩分
意外かもしれないけれど、チーズは英国における塩分の摂取源のトップ10に入っており、多くの人が1年で9kgのチーズを食べる。塩分の摂りすぎは血圧を上昇させ、結果的に心血管系疾患(脳卒中、心臓発作、心不全)や腎疾患のリスクを高めるという有力な証拠があるため、英国政府は減塩の目標値を設定し、チーズ製造業者に塩分の含有量を減らすよう働きかけた。しかし、市場に出ている計612種類のチーズを対象とした2014年の調査では、全てのチーズが目標値をクリアしているわけではないことが判明。ハルーミチーズとブルーチーズは平均的な塩分含有量が100gあたり2.71gと最も多く、海水よりも塩分濃度が高いことが分かった。塩分が比較的少ないチーズには、カッテージチーズ、クリームチーズ、モッツァレラチーズ、エメンタールチーズなどがある。
ウォレス医学博士による判定は
まず覚えておいてほしいのは、この世には“良い”食べ物も“悪い”食べ物も存在しないという事実。どんな食べ物も“控えめに”楽しむようにすればいいだけ。
よって、チーズをメニューから外す必要はないし、健康でバランスの良い食生活の一部にするのもまったくもって問題ない。
とりわけ、ブルーチーズや熟成チェダーチーズのように味がしっかりしたチーズは、量が少なくても食べ応えがあるので、物足りなさを感じたり、逆に歩けなくなるほど食べすぎたりすることが少ないはず。地元の市場に足を運べば、伝統的な種類や特殊な種類を販売している個人のチーズ製造者に出合える可能性も高い(特にクリスマスシーズン)。また、ブドウ、リンゴ、洋ナシはチーズとの相性が非常によいので、1日の果物の目標摂取量を満たすためにも上手に活用してほしい。
※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Dr Hazel Wallace Translation: Ai Igamoto